ドクササコって知ってますか?

2021年06月30日 脳神経内科だより

ドクササコは,ナラタケとよく似ていますが,その名の通り食べると中毒を起こすキノコです.実際,平成24年に県内(小千谷市)でも中毒が発生しています.

登木口進 先生(現小千谷総合病院)は,ドクササコに大変造詣が深く,ドクササコの臨床的・歴史的な知見はもちろん,ドクササコの成長や分布に至るまでを研究している,いわばドクササコの大家です.多数の報告や著書があります.このたび,「私のドクササコ研究の歩み」が出版されました(非売品です).

ドクササコ表紙 登木口先生

ここで少しだけ内容を紹介させていただきます.

ドクササコ中毒を文献と自験例から3種類に分類しています(登木口の分類).

・古典的な肢端紅痛症型(エリトロメラルギー型)
・発赤を伴わない手足の激痛を呈する型(アクロメラルギー型)
・手足のシビレだけ呈する型(アクロパレスジー型)

ドクササコ中毒は明治24年に初めて報告されましたが,手足の痛みと発赤を伴うことが特徴とされました(エリトロメラルギー型).しかしその後,発赤が出ない型(アクロメラルギー型)があることに気づき,当教室からも報告しています(田部浩行.臨床神経学2000 40;525).

大変興味深いのは,なぜ学名がacromelalga(アクロメラルガ)なのか,という考察です.ドクササコの原因菌は大正7年に国内外の雑誌に報告され,学名はClitocybe acromelalgaとされましたが,本来ドクササコ中毒は発赤を伴うことが多いです.これは,報告の元になった大正3年の石川県凰至郡の中毒事件が,発赤を伴わないアクロメラルギー型だったのではないか,という登木口先生の考えを,過去の文献や当時の新聞資料をもとに考察されています.

ドクササコ

平成24年の小千谷市の中毒事件で,登木口進 先生が実際に患者さんを診察したことも,ドクササコへの情熱の一因となっています.このように,患者さんを丁寧に診察し,臨床から立脚した知見を集積し,形にしていくことは,当教室の伝統であり,我々が目指すべき姿だと感じています.

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