神経変性疾患研究

研究概要

新潟大学脳研究所 神経内科,分子神経疾患資源解析学分野では研究テーマの一つとして,筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の病態生理解明を行っています.当科では脳研究所所属の特性を生かし患者さんの剖検組織にアクセスすることで,実際の病態生理に近づけるよう研究を進めています.
ALSは1869年にシャルコーにより報告されて以降,近年に至るまで病態機序不明の運動神経変性疾患(MND)でした.しかし2006年にArai, Neuman らがそれぞれ,ALS残存運動神経細胞内封入体の主要構成蛋白がTDP-43である事を解明してから, ALS研究は飛躍的に進行しました.さらに遺伝性ALSの原因遺伝子として,2007年以降に複数の原因遺伝子が同定され,TARDBP(TDP-43),FUS,C9orf72,hnRNPA1 などRNA代謝関連蛋白質をコードするものが複数認められました.これらの発見からALS病態機序とRNA代謝の関連が重要視されています.
当施設では2008年にTARDBP遺伝子変異による家族性ALSを世界に先駆けて同定,報告しました.
1).同時期の発表を含めて世界中の複数施設より続報があり,現在は30を超えるTARDBP遺伝子変異が知られています.ALSの発症にTDP-43が直接的に関与することを示し,その後のALS研究の方向性に影響を与えた報告といえます.2012年には,本邦ではごく稀なC9orf72遺伝子変異例の遺伝子解析結果について報告をしています
2).2013年にはALSの病態機序としてRNA代謝異常,splicing異常を報告しています. ALS症例の運動神経組織における検討で,核内小体GEMおよび機能性RNA minor spliceosomal snRNAsの減少を見出しました
3).これはMNDの一種,脊髄性筋萎縮症(SMA)でもみられる所見です.MNDに共通する病態機序が存在することを提唱しました(図1).

図1:ALSとSMAに共通するRNA代謝異常
図1:ALSとSMAに共通するRNA代謝異常

2016年に ALSのkey moleculeであるTDP-43の発現調節機構を報告しました. TDP-43蛋白による自己mRNAの選択的 splicing 調節機構やmRNAの移動を介した複雑な機構を詳細に解析しています.さらにALS罹患組織ではこの機構の破綻がある事を報告しました4)(図2).

図2:TDP-43蛋白質の発現自己調節機構
図2:TDP-43蛋白質の発現自己調節機構

現在もTDP-43の選択的スプライシング,SMN 遺伝子多型などの複数の視点から,研究を行っています.病態機序解明を通じ臨床に還元を行うこと,即ちALSの早期診断,治療法解明に寄与することを目標としています.

ALS研究グループでは、週1回、それぞれが実験の生データを持ち寄り、進捗状況を報告し、結果の解釈を議論しています。新しい気付きが得られ、研究の方向性が決定されていくことも多く、とてもエキサイティングなミーティングとなっています。

参考文献

  1. Yokoseki A, Shiga A, Tan CF, et al. TDP-43 mutation in familial amyotrophic lateral sclerosis. Annals of neurology. 2008;63:538-542
  2. Konno T, Shiga A, Tsujino A, et al. Japanese amyotrophic lateral sclerosis patients with GGGGCC hexanucleotide repeat expansion in C9ORF72. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry. 2012 jnnp-2012-302272
  3. Ishihara T, Ariizumi Y, Shiga A, et al. Decreased number of Gemini of coiled bodies and U12 snRNA level in amyotrophic lateral sclerosis. Human molecular genetics. 2013;22:4136-4147
  4. Koyama A, Sugai A, Kato T, et al. Increased cytoplasmic TARDBP mRNA in affected spinal motor neurons in ALS caused by abnormal autoregulation of TDP-43. Nucleic Acids Research. 2016 gkw499

参考リンク

脳研究所HP
脳研コラム

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