DIAN-TU investigator meeting参加報告

2023年10月19日 脳神経内科だより

10月9日から10月11日の3日間(現地時間),米国St.Louis のWashington University School of Medicine(以下,ワシントン大学)においてDIAN-TU investigator meetingに参加致しました.

DIAN(Dominantly Inherited Alzheimer Network)とは顕性遺伝性アルツハイマー病の国際共同研究ネットワークです.このDIAN研究は今回訪問したワシントン大学の主導により行われています.これまで,未発症期からの縦断的な観察研究(DIAN-OBS:observational study)が行われてきました.mutation carrierとnoncarrierの比較に基づくこの研究によって,臨床症状,認知機能,各biomarker(血液・脳液髄液,画像検査)のアルツハイマー病発症前からの変化が明らかになるなど,その後のアルツハイマー病研究に多大な影響があったことは言うまでもありません.

この観察研究に続き,2012年から顕性遺伝性アルツハイマー病のmutation carrierを対象に治療介入研究(DIAN-TU:Trials-Unit)が開始されています.その一環として新規抗タウ抗体(E2814)と抗Aβ抗体(レカネマブ)による治験参加が本邦でも予定されています.これに先立ち,DIAN関係者と日本の研究者とのmeetingが現地で開催されました.この度,私も本治験のsub-investigatorとして,当研究所の遺伝機能解析学分野 池内健先生,春日健作先生と共に参加致しました.

日程としては移動も含めかなりの過密スケジュールでした.初日に大量のプリントが綴じられた分厚いバインダーファイルが与えられ,これに基づきしっかりと詳細な解説がなされました.開催前日の夜に到着し,初日の朝より終日,会場に缶詰状態で各分野のコアの先生方からの治験内容に関わるlectureとdiscussion/Q&A,臨床的評価法のtraining,血液や脳脊髄液検体の処理についての説明が夕方まで続きました(最終日は午前で全日程が終了し,そのまま帰路へ).厳密なプロトコールに基づき,確実で信頼性の高い臨床研究としたいという先方の意欲が伺えました.

各日のmeeting終了後は初日が会場内でのreception,2日目が宿泊ホテル内のレストランでのdinnerがあり,関係者間の交流も図られ内容はきわめて充実しておりました.この機会を通じて,DIAN研究のdirectorであるRandoll Bateman先生と直接お話しさせて頂くことも出来ました.Bateman先生に限らず,DIAN研究の関係者の方々は皆さんfriendlyで私のbroken Englishにも優しく付き合っていただき,本当に素敵な人ばかりでした.

私はjet lagが会期中にほぼ抜けず,meeting中の突然の睡魔,連日の不眠となかなか大変でした(最終日にようやく眠れたかと思いきや,定時に起床できず,春日先生に目覚ましコールをいただくというハプニングも起こしてしまいました・・・)

なかなか克服できないjet lagで大変苦労しましたが,今回の国際共同治験に関わらせていただくことで,AD臨床研究の最先端の施設を訪問し,研究者の方々のお話を直接伺えるという大変貴重な機会に恵まれました.

臨床医として,目の前の患者さんを大切にすると同時に,臨床研究という将来の患者さんのための仕事の重要性と責務を改めて感じました.今回のinvestigator meetingに参加し,on-siteによって感じ取ることのできた空気感がより一層,臨床研究に携わることへのmotivationを高めてくれたように思います.
(石黒敬信 記載)
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