ISC 2019

2019年02月10日 神経内科だより

学会参加報告
〜International Stroke Conference 2019 at Honolulu, HI〜
金澤 雅人

ハワイで開催された国際脳卒中会議2019(ISC2019)に参加しました.
今回は,新しい情報を得に行ったのみですが,たまたま脳卒中学会との共同開催であったSVDに関するシンポジウムに参加された,小野寺先生とご一緒することになりました.1枚目と最後のZivin sessionが印象になった点です.

新潟を出た時は,寒かったですが,こちらは25度をこえて,汗ばむくらいでした.
Preconferenceからだと会期3日半,参加者4500人と,脳卒中関連では一番大きな会です.
Hawaii Convention Centerは15年前,8年前のAANの総会で2回来ていたので,特に困ることはありませんでした.初日は空港からすぐにPreconferenceに参加し,最終日も朝のセッションにでてから,帰国できたので,とても便利です.小さな都市ですので,朝のnewsでもISCの初日には,Strokologistが世界から集まっているといっていました.そのうちいずれかの学会で,訪れる人もいることでしょう.

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会場のHawaii Convention Center

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Plenary Session(総会のメイン)

ISC2015, Nashvilleでは,直前のMR CLEANの結果と,大会初日にあわせてNEJMに報告された3つの血管内治療のpositive resultで大いに盛り上がり,前回ISC2018, LAは,発症6~24時間までの機械的血栓除去(MT)の有効性を示したDAWN trialと,会の初日にNEJMに掲載されたDEFUSE3の結果を踏まえ,ガイドラインが学会初日に,大幅に改訂され,時代が大きく変わりました.
 しかし,今回はあまり変化がありませんでした(前回のISC Hawaii大会ISC2012では,その当時の血管内治療のtrialの無効の結果がしめされ,Honolulu shockなどと呼ばれている.のんびりした開催地によるのか??).ただし,昨年同様治療対象として慢性期のStrokeや変性も含めたdementia,脳腸連関,SVDのセッションが行われており,今回も今後の方向を考える機会になったとは思います.

Preconf 国際脳循環代謝学会と共催で,基礎的な内容
1. Brain-gut axis 最近はやりの内容.脳梗塞マウスのgut microbiotaのコントロールに投与した後に脳梗塞を起こすと,悪化するとか,cytokineが炎症に傾くなど予想されるような結果であった.ISC本体でもシンポがあった.
2. Ketone ここ最近,ketoneが保護的に働くという報告がある.ミトコンドリアが関係し,高血糖の反対のような病態を見ているのだろう.よくありがちなmicrogliaが関係すると論じている報告もあった.pyruvate投与でLPSによる炎症惹起もおきなくなる.これは,iNOSを介する.
3. Neuroimmune いうまでもなく,脳梗塞の病態には神経免疫が関係する,J Leukoc Biol 2018 1-14, JCI2018:120:2057-69に総説
 保護局性のswitchにSTAT6が関係する.単球にOGDをかけてtranscriptomeの解析をしていた.
4. Imaging 梗塞の体側の活性化をfunctional MRIで示す.抑制性入力が低下することになる(Grelkes Ann Neurol 2008)

Prenary day1
日本は欧米と比べて圧倒的に高齢化が進んでおり,’20に50歳以上が人口の45%を占めることから,Strokeの対応をより考える必要がある(そこまでではないと思うが).米国では’30にはStrokeの罹患率25%,医療費は100Billion dollarが予想されている(数年前は80 billion dollerだった).やはりStrokeには取り組むべき意義がある.
 Microsoftの創設者のPaul Allenが設立したStroke研究の財団のkeywordは,inflemmation, hypoperfusion, proteinosis, aging・diabetesだそうだ.つまり今の研究の方向性がこれらである.

SHINE trial 高血糖は,脳卒中の増悪因子であることが示されているが,急性期の血糖管理 standard < 180mg/dLとintensiveの80~130mg/dLでどちらがよいかというもの.結果は,かわりがなかった.急性期の血糖管理はmildにするということは他の疾患でもいえることであり,予想された結果である.

RIGHT-2 trial (Lancet) NO供与体のglycerl trinitrateを救急隊が投与するというprehospital治療の検討.数年前にMg投与のFASTMagの結果が示され,二つのtrialはnegativeな結果で終わった.その一方で,救急隊員が判断して投与できることは示されている.後ほど記すが,オーストラリアはprehospitalの対応として,救急車内でMRIをとって,血栓溶解を行う治験が進行中である.そういう時代が近いのだろう.

CSPS.com 国循の豊田先生が報告. DAPTの亜急性期までの有効性が示されているが,出血のリスクを減らすため,clopidogrel+cilostazolではどうかというもの.結果として,併用の方が年間再発リスクは低く(2%, clopidogrel単剤は4.5%),出血リスクもどちらも1%以下と低かった.併用がより勝るという結果であった.ただし,どこまで続けるべきなのかはわからなかった.これから論文になると思うので,実際を読んでみたい.
 日本の先生がplenaryで発表されることは,数少ない.しかし,国際学会では教育的な配慮もあり,学生,レジデントが話すことも多い.初めてAANに参加した時に下畑先生と話したように,plenaryに呼ばれるような仕事をしていきたい.

当日にJAMA Neurolに発表され脳出血(CAAではなく)のリスクにApoE ε 2 ε 4がmetaanalysisでリスクとなることが示された.

Plenary day 2
MISTIE 3 MISTIE III trial
脳出血に血腫除去が本当に有効かは議論があるところだが,tPAを血腫に投与して,血液成分を回収しやすくしたうえでの低侵襲手術の有効性を検討したものである(今回phaseIIIまで).結果は,思ったほどよくなく,三か月後のmRS0^3の機能良好群は,血腫量<15mlに限られた.

Andexanet alfa (当日のNEJMに掲載)
DOACのXa阻害の阻害剤の検討.Edoxaban, rivaroxaban, apixabanを含むXa阻害薬を投与している254例に対してreverseをかけるときの有効性を示した.ただし,Nがすくない...

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会場前のカフェ

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地域対抗クイズ大会に出ている小野寺先生

以下はシンポ
Reperfusion injury
動物実験では,25年ほど前から言われていたが,tPA投与,特にMTが行われる現在だから臨床的にも注目されるようになった.Reperfusion injuryがfact/fictionの二つの考えからのdebate session.

動物実験では,再灌流と永久閉塞モデルでは,前者の方がフリーラジカル産生,炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1β, IL-6)が多く検出される.それにより梗塞体積が大きい,出血合併を認めるとされている.

それに対して,自然発症高血圧ラットSHRを用いたモデルでは,上記の違いが大きくないというデータからfakeだと論じていた.まら,MTのDAWNでもいわゆる症候性の大きな出血PH2は少ない(実臨床ではtPA投与,MTでも出血は意外と少ない)ことからも,本当にreperfusion injuryがあるのかは定かではない.臨床家からは,時間がながくても再灌流したほうが改善する例もいるので,reperfusion injuryを考えるより,治療が優先と話していた.

→フロアーから,虚血とそのあとのreperfusion injuryを分けることが難しいし,早いに再開通に越したことはないという意見でみんなが納得していた.

Justin Zivin memorial
tPAを脳梗塞に応用することになったScience 1985の論文を示したProf Zivinが昨年亡くなった.それを踏まえてProf Lyden(Zivinといっぱい仕事をされている先生で,今年の臨床の一番の賞を受賞した)がorganizerとして企画された.
 Prof Zivinは,71歳でなくなったが,心筋梗塞に対して使われていたtPA(alteplase)を脳塞栓の溶解薬として示したScienceの仕事は39歳の時であった.そのあと,彼やLyden,日本の山口先生,私の留学中のボスdel Zoppoなどが世界の先生と協力し,1995年に初めて臨床応用されるに至った.私は,そのころ医学生であり,そういう夢の薬の存在は知っていたが,その当時は興味がまったくない分野であった.しかし,今そういうことに携わっているのは不思議である.その後Prof ZivinはtPAの弱点である,1. 半減期が極めて短い,2. fibrinに対する選択性の低さを改善する組み換えのtenecteplase(TNK)の応用に携わった.最近も週一回はProf Lydenと話していたそうだ(TNKは1994にPNASに示され,だいぶ前から心筋梗塞では,Alteplaseから置き換わっている).

飛行機の関係で,Prof Camplell (Australia)の話だけ聞いてきた.今回一番excitingだったかもしれない.

2017にtPAの総説をJ Atheroscler Thromb, 2017; 24: 240-253.に書いている.興味のある先生はご一読してほしい.このときにはTNKのPhase I少数例の結果がNEJM2012に示されたまでであった.論理的にはalteplaseに勝ると考えられるTNKであり,2018NEJMでTNK+MTでtPAよりも機能予後改善が示されていたが,tPAに本当に置き換わるのか?と思っていた.
 しかし,そこからさらに進み,AustraliaではTASTE studyでDWI perfusion missmatchがある例で,有効と考えられる例では積極的に投与しているそうだ.また,現在進行中のものでは救急車の中でMRIをとって,適応例はprehospital cure(careではない!)として,TNKを投与することが始まっているそうである.実際,Australiaの二つの州は,すでにtPAからTNKに置き換わっている.今後さらに進むであろう.“Big America Great Again”になぞられて,”Big Neurologist Great Again”なんだそうだ(私の理解では,ASAとAANはそれほど接点がないと思っていたが).それなりにこの領域の進歩は理解していると思うが,直接会場で分かる進歩を感じた.

実は,PhiladelphiaのAANでprofessor ledposterで発表した時にたまたまProf Zivinが来てくれていた.ミーハーな私はたいしてうれしかった思い出がある.国際学会だと有名な人が近く,いろいろとinspireされる.

次回は来年2月19-21日に,LA, CAで開催されます(またかですが).日本から行きやすいアメリカ本土です.頑張って,後輩を連れていけるよう努めます.

 

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